銚子電気鉄道株式会社 代表取締役 竹本 勝紀 氏 | 幕張新都心 MICE・IRを考える

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銚子電気鉄道株式会社 代表取締役 竹本 勝紀 氏

銚子を見ているからこそ伝えたい、
千葉発展のためのアイディアとエンターテイメント




銚子電鉄 竹本社長

「エンタメ鉄道」と称され、様々なメディアで取り上げられている銚子電気鉄道株式会社 代表取締役社長 竹本 勝紀氏。話題性のある豊富なアイディアと実行力で“乗って楽しい鉄道”を手掛けた第一人者。銚子電鉄を苦境の困難から救い、現在も社長でありながら現役で車両の運転も務め、地元住民や観光客をもてなす、まさにエンターティナー。今もなお挑戦し続けるエンターテイメント界の社長に、電鉄業界から見たMICE・IRへの思いや自身の経験も交えた告知アイディアなど、お話を伺った。

認知度や信頼性を高めていくのはAIDMA(アイドマ)の法則

PR、いわゆる広報活動を一生懸命に徹底してやっていく必要があると思います。認知度を高めて信頼度を高めていく、そのためにはメディアに取り上げてもらうことやSNSを使うことも重要だと思います。まず、メディアに取り上げてもらうには意外性が大事であり、我々がいつも心がけているのがAIDMA(アイドマ)の法則です。
※(Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字)

まずはAttention、多くの方に銚子電鉄を知ってもらいたいとすれば、興味を持ってもらうようなことを仕掛け、注意を引き付けます。「え!?鉄道会社がお化け屋敷?」といったような、意外性のある印象を与えることです。次にInterest、つまり、関心を持ってもらい、びっくりさせておきながら「面白そう!」と思わせます。Desireは「行ってみようよ」や「行ってみたい!」といったような欲望を喚起させ、Memory、「銚子までこうやっていくのか」「お化け屋敷電車は2,700円か」などといったような情報を記憶してもらうことです。最後のActionは実際に乗車してもらいます。
我々は、こういったAIDMA(アイドマ)の法則にのっとった戦略戦術を策定してひたすらに告知していくことを繰り返しています。

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2019.6.16に運行したイベント電車「メロン電車」(料金1,000円)は銚子メロン1玉お土産付

意表を突くようなマーケティングで展開し続ける

もともと国鉄は国がやっていたということもあり、鉄道会社というと堅いイメージがありますが、“鉄道会社にしてはやわらかい”、“鉄道会社にしてはユニークだ”、といった差別化で意外性も狙って売りにしています。こんなことまでやっていいの?というようなことや、意表を突くようなマーケティングを多用して、それを具現化したのが100万本のヒット商品となったまずい棒です。実際にはギリギリの戦いではありました。最終責任者としてリスクを背負わなくてはいけない、越えなければいけない壁がある中で、リスクテイカーとしての意識や覚悟を常に持っていなければなりません。結果として100万本のヒット商品につながりました。
だから、IRを知ってもらうためにどういう方法があるかという意味でも、意外性の“アテンション”は非常に重要だと思います。

“千葉らしさ”とはひとつひとつを積み重ねたもの

IRについても同様に、“エンターテイメント”だと考えるのが良いでしょう。地域に愛されるIR、この街にIRがあって良かったと思っていただけるように、たくさんの人に来てもらって、地域色豊かなIRを目指していくことが望ましいと思います。
そのためには、IRという言葉もMICEという言葉自体も、日本人にわかりやすく地域性のある表現にした方がわかりやすいです。例えば、キャッチコピーを千葉の言葉で表現するなど、千葉らしさをアピールするべきです。
『ミルフィーユ』とはフランス語ですが、ミルが「千」、フィーユが「葉っぱ」という意味です。どの企業も昨日より今日、今日より明日と、小さな革新の積み重ねが企業の発展につながっていくと常に思っています。ミルフィーユというお菓子も薄いパイ生地が重なって形になっていますが、それと同じように、ちょっとしたシンプルなことを積み重ねて形を創り上げていく、これは企業経営にも同じことだと言えます。各自が与えられた任務の範囲内において、小さな革新の積み重ねをしていくこと、この積み重ね革新を『ミルフィーユ改革』と呼んでいて、よく講演会でもお話します。なぜなら、ミルフィーユとは日本語で“千葉”という意味ですから、千葉改革は小さな薄い膜を積み重ねていって形あるものにしていこうと思っています。

ミルフィーユ改革の第一歩にMICE・IRを

今後、日本全国の人口が減る中で、千葉も街が寂れないために何をしていくべきかを住民と一体となって考えていかなくてはならないと思います。少しでも進歩していこう、少しずつ“積み重ね革新”をしていこうと動いていくことが重要だと思います。そのためには、積み重ねるための大きな土台として器が必要です。IRはその一環だと思っていて、地域の発展のために、まずは器となるものを用意して、中身をどんどん充実させていけば街の存続につながると思っています。私は、持続可能な千葉のために、まずはその第一歩がMICE・IRだと考えます。

銚子電鉄 竹本社長インタビュー

千葉を有効活用した理想の幕張MICE・IR

千葉の街の沿線全体を一大リゾートにしていけたらいいなと思います。MICEはもうすでにあるので、IRに力を入れていくべきと考えます。
千葉にはすでにディズニーリゾートがありますが、競合するのではなく、ディズニーにはないものがIRにあって、IRにないものがディズニーにあるというような、総合補管といったようなかたちが望ましいですね。
京葉線は、車窓からの景色が色々変わっていくのがすごく楽しめて、通勤路線なのにリゾート路線のような感じだなと思います。蘇我を出ると、まもなく海や千葉の港が見えてきて、幕張メッセや高層ビルといった都会のような雰囲気を味わい、路線自体がリゾート鉄道に感じられます。鉄道を一つの軸として、京葉線に備わっている素晴らしいポテンシャルと近隣のリゾートと総合補管という位置づけで進めていけたら、千葉らしさが出せるのではないでしょうか。

笑いの発祥地として『関東の笑いを千葉から』

誘致されたら、二次交通として我々に何かできることがあればいいと願います。今よりもさらに面白いことができ、集客も可能です。エンターテイメント鉄道として、“常に誰かが電車の中で演劇をしている”、“乗った人は何か自己表現する”といったようなエンタメ的な要素が満載な路面電車の構想も、非常に面白いと思います。いつ・誰が乗っても面白い、損をさせないというような鉄道を走らせていきたいですね。あとは、コント、漫才、喜劇、落語などで人々を元気にして「あぁ 面白かった!」と思ってもらえるようなエンターテイメントの場として、笑いを提供できる場所にしていきたいという思いもあります。そこでしか体験できない、一味違ったエンタメ系スポーツもあるといいですよね。

千葉市の発展のためのエンターテインメント

千葉には今、千葉の良さを生かした施設や施策が必要です。その一環として、MICE・IRというとあまりピンと来ないかもしれませんが、日本語で分かりやすくし、千葉らしさのあるスパイスを加えた馴染めるキャッチコピーをつけて、千葉をPRする拠点になるように進めていければいいと思います。
県でエンターテイメントに手を挙げることは、リスクも生じますが、非常に重要なことです。
銚子市も5年前と比べると人口が一割近く減ってきています。この勢いだと20年後には今の半分ぐらいになっているのではといわれています。今まで経験したことのないような人口減少がある中で、千葉市も無縁ではなく、2020年をピークに人口が減っていくといわれています。銚子で今、先駆けて起きている人口減少をみているからこそ、理屈ではなく、人が減って町がなくなっていく危機感というものがあります。だからこそ、どうやって持続可能な街をつくっていくのかと考えていくことが大前提だと思います。その手段としてIRの本質をカジノに重点を置くのではなく、様々なエンターテイメント性のある場所と考え、ここを拠点に活性化させていくことで、千葉の発展につなげていけるよう、みんなで進めていきたいと思っております。

銚子電鉄


プロフィール
竹本 勝紀(たけもと かつのり)
銚子電気鉄道株式会社 代表取締役社長
銚子電鉄顧問税理士から2012年に代表取締役に就任後、2016年に電車の運転免許を取得。
ぬれ煎餅・まずい棒などのヒット商品も手掛け、お化け屋敷電車やイルミネーション電車など、常にエンターテイメントを追求しユニークなアイディアを打ち出し続けている。

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