株式会社 ランドマーク 代表取締役 青山 智子 氏
女性社長が見つめる、
幕張新都心MICE・IRの持つ「夢」
MICE・IRとは「夢」である…「女性のための不動産情報サイト」を始め、女性目線からの心配りや気遣いが盛り込まれた不動産賃貸や売買事業を手掛ける「株式会社ランドマーク」代表、青山智子氏はこう語る。幕張新都心MICE・IR実現に不可欠なのは、まさに女性の力。今回は女性だからこそ語れる、幕張新都心MICE・IRに込められたちばの未来についてのお話を伺った。
7年間で幕張新都心IRの可能性は、ほぼ0から実現可能まで変化
私が幕張新都心MICE・IR計画について知ったのは、7年前に幕張経営者クラブに初めて参加した時です。当時はMICE・ IRの言葉自体もメジャーでなく、実現できる可能性もほとんど0、淡い夢のような感じでした。ところが、7年経って法案も通り、MICE・ IRの可能性が現段階で見えてきたため、この7年間の手ごたえをとても感じています。
7年間に海外の現場や裏方を見てわかったのが、IRの本質です。カジノだけでなくショービジネス、国際会議場もあり、実際には家族連れで来ている人がとても多いことが分かりました。家族そろってエンターテイメントを見るといった楽しみ方ができる場所なので、海外のIRは空間的にも広い場所が多かったです。これを踏まえると、幕張新都心の IRは、日本的なものを取り入れつつ実現するのが良いでしょう。幕張は夕方になると、空と海と富士山が見えます。都心近くでこの景色が見えるところはなかなかないため、自然が活かせるものができればと考えています。
また、千葉は東京から近いのに垢ぬけない、都心に比べると置いてきぼりにされているような感じがしますよね。そんな千葉がMICE・IRをきっかけに東京のような発信できる拠点になれればとも思います。
女性としての立場から言えば、住環境とMICE・IRが融合できるように、収益を地域住民のための、例えばインフラ整備のような安心できる環境づくりに使うのが良いでしょう。特に女性は安定を求めますので、MICE・IRが生活に密着できる存在となれば、安心感も得られます。また、幕張は子供も多く、インターナショナルスクールも含めた学校も多いです。子供たちが安心して暮らせる都市づくりとともに、国際的な都市として再発見できるような街づくりを、MICE・IRを通じて行うのが重要です。
海外のIR視察を通じ、日本にとってMICE・IRは必然であると実感
7年間で、海外各国に足を運んでIRの視察を行いました。まず、シンガポールはとても洗礼されている印象を受けました。世界中から観光客が来ることもあり、GDPが2%上がったという、高い経済効果も出ています。
マカオは、以前は何となく暗くて怖いイメージがある街でした。ところが、IRとなってからはガラッとイメージが変わったのが印象的でした。暗いイメージは払しょくされ、まるでラスベガスのような明るい華やかな街になっていました。さらに、IRでの収益はマカオ住民のために使われるため税金は0円に。住民が住みやすくなったので高い経済効果が出せただけでなく、治安も良くなった成功事例です。また、植民地だった歴史もあるマカオは世界遺産が多い国です。観光客は、昼は世界遺産巡り、夜はカジノとマカオで幅広い楽しみ方ができるため、街を活かしたIRづくりがされているのが特徴的でした。
フィリピンのマニラのIRは最先端の物を取り入れ、規模も大きかったです。バックヤードも、カードを入れると制服が自動的に出てくるなどオートメーション化されていました。さらに、表だけでなくバックヤードにディーラーの養成学校やギャンブル依存症のケアを研究する施設などがあり、バックヤードに力を入れているのが大きな特徴でした。
韓国のソウルのIRは試行錯誤されている印象でした。成功した面だけでなく、失敗した面も見られたため、とても勉強になりました。
日本は少子高齢化で労働力が減っています。そのため、現状で国内の生産性を高めるのは、MICE・IRは必然であると感じています。IR、というと「カジノ」というイメージが強く、特に女性はカジノ=ギャンブル、でアレルギーを起こしてしまう人も少なくありません。しかし、元々日本は競馬や競輪など、公営ギャンブルが盛んな国です。ギャンブル依存症についても、世間でIRの話題が出るようになるのと同時に取り上げられることが多くなりました。ギャンブル依存症に対する対策は、IRも含めて日本では深刻な問題となっていますし、諸外国と同じく対策を取るべきと考えています。さらに、IR=カジノだけでない、正しい認識を市民へ伝えるのも大切でしょう。
幕張の目指す日本型IRとは「自然を壊さない」「災害に強い」
幕張のIR構想のひとつに、メガフロートがあります。メガフロートの最大の特徴は、自然破壊をしないで作れることです。メガフロートは従来の埋め立て地とは違い、下は漁礁として、海の中の自然をそのまま活かせる特徴があります。さらに日本は地震国のため、従来の埋め立て地では液状化のほか、地震に伴って津波が来れば甚大な被害が出ますが、メガフロートなら津波が来ても揺れだけの対策で済みます。自然も壊さず、災害にも強いメガフロートが作れるのは、優秀な鉄鋼技術を持っている日本だからです。そのため、構造として優秀なだけでなく、日本にしかないメガフロートという珍しい構造を見るだけでも、多くの観光客が集まることが期待できます。
もしメガフロートではなく陸地にIRを作るのなら、幕張メッセの駐車場を使って、街と一体化するのが有効です。水平線と富士山と見える中でエンターテイメント性の高いショーを見たり、国際展示場があったりと幅広い活用ができます。
さらに幕張は羽田と成田の両方が使える、東京駅からバスも出せるという立地の良さがあります。無料バスを数多く運行させて、お客様を不便にさせない、日本的なおもてなしが融合したIR作りができるでしょう。これを踏まえて、解決しなければいけない問題は、幕張にはホテルが足りない、ということですね。
幕張IR実現へのあと一歩は「女性の力」
日本全国でIR誘致に動いている自治体は多数ありますが、自治体と市民が連携して、まさに一枚岩になって進めなければ実現はしません。自治体や企業だけが賛成しても、地域住民が反対すれば、当然IR誘致は頓挫するでしょう。そのために、まず幕張IR実現で必要なのが、市長が手を挙げることだと思います。もちろん、私も含めて企業もIR誘致のために動きますが、あくまでサポート役です。市長が中心となって幕張IR誘致へ動くには、まず市長が安心して手を挙げられるようなレールづくりを我々企業がするべきでしょう。これに加えて、必要なのが住民の賛成です。IRだけでなく、住民の賛成を得るには、実は女性票がとても大きな影響を持っています。自分たちが住んでいる街だからこそ、影響があるような意見や計画に対しては、反対意見を上げる女性も少なくありません。逆に、女性は市民ネットワークの強さや広がりも持っているため、賛成に傾くと一気に賛成や同意が得られる可能性もあります。
女性というのはカジノ、という言葉にどうしても抵抗があります。カジノは当然ギャンブルですから、母親としては自分の子供にどんな影響があるかが心配になります。さらに「IRは街の活性化に有効」と言っても、特に現在では住む上で困りごとがないと興味も薄れてしまいます。まずは女性の意見をしっかりと聞き、さらにカジノという悪い印象でなく、地域の活性化や子供たちの未来のためといったIRのプラスの部分を浸透させれば、住民も含めて女性の立場から、新しい意見が生まれてくるのではないかと考えています。
幕張IRは女性にとっての自信にもなる「夢」である
IRに関する認識は、法案も通って動いているということは民間の2割ほどの人は認識しているが、知らない人はまだ多いと思います。とはいえ、日本も何か大きなものを作ろう、という意志が必要だと考えています。このまま少子高齢化が進み、老後や未来への敢然とした不安を持つ人が増えれば、日本はガタガタになってしまうでしょう。そのためには、日本全体が常に夢を持つこと、今後のことを考えられる何か大きなものを作るのが必要だと思います。そして、MICE・IRは日本全体が明るい未来が想像できる、ひとつの「夢」であると私は考えます。
私が7年前の幕張経営者クラブに誘われた時、MICE・IRの計画の中の「日本創生」という言葉にとても惹かれました。幕張だけでなく、千葉全体で日本創生がやりたい。東京、横浜、千葉を一本のラインで結びたい、という言葉を聞いたときに、MICE・IRは未来に不安を持つ日本人にとっての希望、つまり「夢」になるのではないか、と思ったのです。
韓国が2018年にインチョン空港第二ターミナルを開業しました。成田よりも何倍も立派な、東洋のハブ空港になる、という意志があふれた空港だと感じました。これと同じように、日本も何か大きなものを作ってやろう、という「夢」を持つことが大切です。私は東京オリンピックがひとつの日本の転換期になるのではないかと期待しています。築地が豊洲に移転したように、日本もどんどん変わっていくべきだと思います。
さらに、日本は女性にはまだまだ冷たい国です。名前ではなく「○○の奥さん」と呼ばれることも多いです。ここで、幕張MICE・IRを女性の力も加えて実現できれば、「女性の力でここまでできた」という女性の自信にもなります。実際に、幕張は地道な活動で、女性の間にMICE・IRへの興味や認識が広まり、地域の女性が一体になりつつあるのが実感できています。例えば、猪口先生の50~60名の女性の会も幕張ならではですよね。幕張IRの実現も、女性の意見や力がなければ実現できません。女性や子供も安心して暮らせる、未来に希望が持てるようになる「夢」も、幕張IRは持っています。
これから未来の千葉へ暮らす人へのメッセージ
これからの千葉の未来のために私がやるべき大切なことは、まず色々な人に会って、賛成意見だけでなく、反対意見も含めてみなさんの意見をしっかり聞いて、取り入れることです。賛成意見がどうしても重要位されがちですが、反対意見こそ重要だと私は考えています。反対意見の元になっている心配事をひとつずつ解消できるような取り組みを行って、みなさんが安心できるような、反対が少しでも賛成の方に寄れるようになれればと思います。
みなさんの意見をしっかり聞いて取り入れる、市民目線は千葉のカラーでもあり、一番大切な要素だと考えています。特に女性の声や力を取り入れれば、みんなが誇れる、子供たちが夢を語れる、安心して住める街づくりの実現にもつながります。そのためには、今の足元だけでなく、先を見ること。幕張IRが、千葉の女性の輪がもっと広がって未来につながっていく「夢」であると期待しています。
プロフィール
青山 智子(あおやま ともこ)
当時、まだ女性の参入が非常に少なかった不動産業界に、不動産賃貸、売買事業を手掛ける株式会社ランドマークを平成2年9月に設立。現在でも女性の目線に立った不動産サイトの運営を始めとした、「女性が安心して住める住居探し」のスペシャリスト。女性ならではの細かい心配りや気遣いが事業からサイトまで施されている。まだ女性の社会進出が少なかった時に、宅地建物取引主任者や賃貸住宅管理士など10種類以上の資格を取得した、パワフルで努力家の一面もある。