有限会社 新都市不動産コンサルタント 代表取締役 池田 銀藏 氏 | 幕張新都心 MICE・IRを考える

幕張新都心MICE・IRを考える

アクセス記事

有限会社 新都市不動産コンサルタント 代表取締役 池田 銀藏 氏

「幕張の土地はみんなのために活用すべき」
 IRのコンテンツに「千葉の馬」を




池田社長

「有限会社 新都市不動産コンサルタント」代表取締役 池田銀藏氏は、平成元年から令和元年まで千葉市における不動産業界で活躍をしてきた。そんな不動産のスペシャリストが幕張IR「統合リゾート施設」誘致活動に参入したきっかけは意外なものだった。独自の側面からIR構想を考える池田氏にお話を伺った。

3つの分野で活躍する背景ときっかけ

平成3年バブル崩壊と同時に前職の不動産会社から独立し、「新都市不動産コンサルタント」を立ち上げ、現在に至ります。
一般社団法人日本空き家空地対策協会については、独立当時より住民から「所有者不明の老朽化した空き家をなんとかならないか」との相談が数多くあり、協会を立ち上げました。
あくまで、利益追求目的ではないため一般社団法人としました。代表理事として、完全に独立した組織として運営しています。

一般社団法人千葉市馬術協会については、5~6年前から「千葉市に馬術協会がないので作って欲しい」と乗馬クラブ経営者より度々お願いをされていました。千葉市には馬術の競技者は多くおりますが、千葉市には馬術協会がないため、競技者がエントリーする窓口がありませんでした。したがって千葉市は長年、馬術競技にエントリーしていませんでした。
千葉市という名前がついていますが、各馬術協会は馬術に携わる乗馬クラブ同士が集まって結成するのが一般的で、地方自治体が作る組織ではないようです。
私も以前から少し乗馬を続けていて、若葉区にある「ちばシティ乗馬クラブ」との親交がありました。そこで、千葉市乗馬協会の設立への依頼を受けて、各界の著名人の方々にお願いし、立ち上げることができました。

IRに興味を持ったきっかけは「千葉の馬」

最初のきっかけは、寒竹代表(DS ヘルスケアグループ)から法人会のお誘いを受けたことです。当時50名ほどだった美浜論理法人会を寒竹代表は100人にするという目標を掲げており、見事達成されました。ちょうどその頃、ある会合にて松本社長(株式会社フォルム)にお会いしました。
その日のうちに一緒に食事をし、それをきっかけに松本社長に多く会う機会を得るようになりました。徐々に幕張IR構想の話を聞くようになり、「ちばの未来」の会にも顔を出すようになりました。

以前から「稲毛海浜公園や幕張海浜公園に馬を出せないか、砂浜や松林を馬でトレッキングができるコースを作り、子どもや障害者、また観光客に乗馬体験をさせてあげたい」という気持ちがありました。
そこに、幕張IRの話を聞いたため、IRのコンテンツのひとつとして馬で何かできないかと思い、興味を持ちました。千葉市に馬術協会もできた時期で、タイミングも良かったです。

全国でも千葉県は乗馬クラブ数が最も多く、馬の頭数についても北海道に続いて全国第二位なのですが、これはあまり知られていません。馬にゆかりのある土地なので、地域再生に馬を利用できないかと以前から考えていました。そこでIRの複合施設での観光面で「馬のまち 千葉」と考えました。

千葉氏

馬はとても品格の高い生き物です。皇族の式典などで馬を使うのは日本だけでなく、イギリス王室をはじめ、多くの国で採用されています。
千葉の馬を使って、結婚式の式場まで新郎新婦を馬車に乗せて移動したり、子どもたちに砂浜を利用して乗馬体験をさせたりすることができたら、IRのコンテンツとして成立します。
実際に馬を取り入れるなら、馬や馬車に乗る人の補助、近くの歩行者などにケガをさせないように安全対策することと、乾いたテニスボールくらいのふんの後始末をサポートするくらいでできます。

幕張が手を上げるには「キーマンの存在」が必要

幕張IR構想が出ていますが、千葉市としてIR誘致計画策定の段階で候補地としての手をまだ挙げていません。
実際に何か新しいことを始めようとする時、行政は後手に回りやすいので、まずは市民レベルでの盛り上がりがないと、行政を動かすことはできないでしょう。
ちばの未来にかかわる私たちがどれだけいいものが出せるか、肉付けをできるかが重要です。肉付けでは、IR構想の空論だけでなく「この企業も協賛する」「提携している」など具体的な施策を行政に提示することです。
問題は千葉市と千葉県の間にある、IRに対する温度差がどのくらいなのかがわからないことです。政財界の中で市民と行政の間に立ち、県に話ができるキーマンが必要だと感じています。市民と行政を結びつけるキーマンの存在があれば、行政と対話できる機会となるでしょう。

次に、市民の機運を高めるための応援をどうやって作っていくかです。
実際にIRは企業にとってリスクは少ないのですが、住民にとってはギャンブル依存症、治安面、青少年への影響など不安材料があります。
まずは住民へ不安材料を取り除く対策や施策のほか、多くの住民や企業からパブリックコメントをいただき、IRができることで得られるメリット・デメリットを提示するべきです。

さらに、依存のための対策や施策を法律で整備してからやるべきと言えるでしょう。実際に、韓国ではカジノ施策で国の対応が後手になってしまい、失敗したケースがあります。今は世界の多くの都市でカジノが導入されていますので、日本としても世界の色々なカジノへ実際に足を運び、カジノの依存についての対策を研究し、対策方法を試作すべきです。私も2013年12月にカンボジアのカジノを見学してきました。
また、カジノに関するスペシャリストを世界各国から招集するのも有効でしょう。今のままでは何の対策もできていないままIRができることになるので、住民の不安材料も払しょくできません。
法整備も含めて、国全体がカジノを受け入れる万全の態勢を整えてから実現させるのが良いでしょう。

幕張に作るからこそ得られるメリット

幕張IR構想当初は、入場料を2,000円くらいで考えていました。ところが受け入れ皿が大きいと依存症になる層も流入することになりますので、今は6,000円の入場料設定で考えています。つまり、国内外の富裕層がIRカジノのターゲットになるのです。
海外から日本にアクセスするには、飛行機か船です。海があり、空港が近くにある幕張は大変有利になります。さらに、幕張IRは大型客船も受け入れられる構想になっています。
県と市が協力すれば用地も確保できます。
逆に、IR誘致に対して幕張が抱える具体的な問題は、防犯、雇用などの住民の不安を解消し、協力を得られるかが重要です。それには、住民の参加型構想が望まれるでしょう。
長さ1,820mの幕張の浜も暗いですし、街も街灯が少なく、夜は真っ暗になります。稲毛の浜から幕張の浜まで総延長は約6㎞もあり、人工浜として世界にも誇れる海浜です。特に幕張の浜は未使用地が多く、海を持たない都市にしたら「勿体ない」の一言ではないでしょうか。

池田社長対談

これだけ幕張には好条件がそろっているのにも関わらず、実際に幕張ベイタウンの住民の8~9割が幕張IR構想を認識していないと思います。「ちばの未来」としてIR関係の情報を、もっと拡散して住民を含めた多くの人に聴いてもらえるようにできればと思います。
実際に千葉市が手を上げるためにも、住民にも丁寧な説明会を何度も行い、IRの機運を盛り上げることが重要です。

「土地は地球からの借り物」だからこそ、みんなのためのIRに

幕張IRをやるからには今までのIRにない画期的な、そして治安面も含めて全世界のIRの見本になるようなポジションを目指して欲しいと思います。
世界中から「IRといえば日本の幕張に学べ」と言われるくらい、各国からIRの視察に来るような場所になることが理想です。
そうすれば、幕張IR自体が千葉市だけでなく、日本全体の誇りにもなります。
日本人は世界的に几帳面で真面目な国と言われています。倫理や方向性を一度定めると、律義に物事を進められる国民性です。IRに関しても日本人らしさを発揮すれば、世界に誇れるような、見本になるような、しかも面白いものができるはずです。

幕張の芝生

私たちは「先祖伝来の土地」など、持っている土地をとても大切にしています。
しかし、土地は個人の所有物ではなく、もともとは私たちが地球から借りているだけにすぎません。
土地は借り物だからこそ、幕張IRも「千葉市のために」「自分たちのために」ではなく、「日本のために」「みんなのために」活用することが大切なのではないでしょうか。


プロフィール
池田 銀藏(いけだ ぎんぞう)
(有)新都市不動産コンサルタント代表取締役。秋田県由利本荘市出身。
バブル崩壊をきっかけに勤めていた不動産会社から独立。ほかにも「一般社団法人日本空き家空地対策協会」会長としての側面も持つ。馬を愛し、自身も乗馬をたしなむことがきっかけで「一般社団法人千葉市馬術協会」設立にも尽力した。

  • LINEで送る