ビィー・トランセホールディングス株式会社 代表取締役 吉田 平 氏 | 幕張新都心 MICE・IRを考える

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ビィー・トランセホールディングス株式会社 代表取締役 吉田 平 氏

「人の集まるところに交通あり…

 IRにおけるLRTの重要性とその役割とは」

 
 
 
 
ビィー・トランセホールディングス株式会社 代表取締役 吉田 平氏
 
幕張活性化の起爆剤として期待されているIR。IRを通じて人の集まるところには必ず交通網が必要となる。千葉市内のバス・タクシー事業3社を統括、展開するビィー・トランセホールディングス株式会社の吉田氏は、公共交通機関は人を運ぶだけでなく、文化を運ぶものでもあると語る。交通事業者だからこそ話せる、幕張の未来IRにおけるLRT(次世代型路面交通システム)の役割と構想についてお話を伺った。
 

幕張の海岸を見て「幕張の宝を活用しなければ」と思ったのがきっかけ

MICE・IR推進活動のきっかけとなったのは、海側のラウンジで食事をしていた時に見た幕張の海岸の姿です。ただ防砂林が広がるだけの光景を見て、「もったいない」と思いました。私の田舎は海の近くで、海は遊びに行くところ、人が集まるところという思いがありました。けれども幕張は美しい砂浜なのに勿体ない、すばらしい環境なのに何もしていない。首都圏にありながら、夕日に富士山も見える美しい海岸はまさに幕張の宝です。この宝である海岸を千葉の活性化に活用したい、と思ったのが一番のきっかけです。
 

幕張の海岸の活用=IRという手段に行きついた理由

幕張が発展するには、海岸などの美しい自然環境を活かしながら新しい可能性を探るのが良いと思いました。発展には当然何らかの投資が必要になりますが、日本は既に国として成熟している状態のため、大きな投資ができる事業はありません。発展途上国のように、まっさらな状態から投資をして新しい可能性を切り開くことは難しいです。よって、成熟している現在の日本で新しく幕張が発展する基礎を作るための投資として、IRがひとつのポイントではないかと考えたからです。
 
幕張の発展の手段としてIR推進に行きついたわけですが、当時私にはIRの知識が全くなかったため、どうしたらIRで活性化できるかの手段も分かりませんでした。そのため、IRの事例としてシンガポールを実際に見学しに行きました。そこで、IR自体がただ単にホテルやカジノを作って経済効果を高めるだけでなく、インフラを含めて地域全体を活性化できる大きな仕掛けであると気が付いたのです。

IRで世界中から外国人のお客様を呼び込むには、飛行場からの立地も重要になります。幕張は国際空港である成田から30分、羽田からも陸路なら1時間、海上交通を使えば30分でアクセスできる地の利があります。世界各国から見ても、主要都市から空港まで30分ほどでアクセスできる利便性のある都市は類を見ません。
 

「新しいコンテンツを作る」ことを目指し、幕張のフォーラムや勉強会の中心へ

IRとは、最初はどうしてもギャンブルなどの悪いイメージがつきやすい「カジノ」という施設をうまくカモフラージュして、納得させるための言葉だと思っていました。実際にIRを勉強することで、IRは投資のエンジンとして、外国人も国内の人も含めて新しい需要を創造するものだと分かったのです。
 
しかし、新しい需要の創造にはIRにもカジノ以外の新しいコンテンツが必要です。テーマパークや興行など、既存のコンテンツでは人々の心をつかむことは難しいです。魅力あるコンテンツがないと、どうしてもIRの利益はカジノ、ということになってしまいます。そこで考えたのが日本型IRです。日本は豊富な日本文化、つまりコンテンツの宝庫です。日本全国には地域ごとに多彩な文化がありますが、首都圏なら唯一全国のコンテンツを集約し、発信する拠点になれます。幕張は首都圏にあるので、日本全国のコンテンツの発信拠点にもなれるのです。
 
さらに、日本の文化の厚みは果てしないものです。幕張IRがコンテンツとして日本の文化を集約、24時間365日発信し続ければ、IRを訪れるお客様へのコンテンツだけでなく、地元の子供たちも、常に本物の日本文化に触れられる環境が整います。IRはカジノ、という面だけを見ないで、地元の発展や子供たちにも良い影響があることを知って欲しいです。

幕張のIR誘致に必要な交通インフラを「LRT」にする理由

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海岸などの自然環境、日本全国の文化を集約して新しいコンテンツとして発信できる環境がそろっている幕張ですが、IRとして誘致するのに必須なのが、新しい交通インフラ、LRTの整備です。
 
今は交通インフラも多様にありますが、実は利用する人に一番喜ばれるのがそのまま乗れるバスやタクシーと言った路面の交通機関です。エレベーターや階段を使わなくても、地面からそのまま乗れます。さらに、いすみ鉄道や栃木の事例を見ると、軌道レール、つまりLRTは人だけでなくその地域の文化も一緒に運んでいることがわかります。
 
まず幕張のIR推進において整えるべき交通インフラは、幕張本郷~海浜幕張~IR用地間のバスターミナルです。さらに、成田空港、羽田空港、そして千葉の主要観光名所(東京ディズニーリゾート)との連結ルートも入れなければいけません。主要地区から幕張IRまでのルートはできますが、さらにLRTで幕張に便利にアクセスできるルートをつなぎます。これが、私の考えた「100年の計」です。
 
100年の計
 
現在、総武線や京葉線の駅からや、千葉市内では「縦方向」の交通網は発達しています。一方で海岸に沿った「横方向」の交通網がないため、幕張の海岸に市内はもちろん、県内の他の地域からもアクセスしにくくなっています。そこで、現在ない「横方向」をLRTで結び、新しい交通網とするのが「100年の計」です。
 
まず、幕張本郷~海浜幕張~稲毛海岸~千葉みなとをLRTでつなぎます。そして、現行の千葉みなとのモノレールのレールを牽引して、モノレールを道路面と同じ高さにすれば、千葉みなとでそのまま乗り換えでき、千葉県内部の人も幕張の海岸に簡単にアクセスできるようになります。
 
さらにLRTのメリットとして、コスト面があります。鉄道は線路や橋のメンテナンスも事業者側で行わなければいけないため、修理費用のコストがかかる一方、路面を走っているバスやタクシーの事業者は道路の修繕費用は負担しません。路面を使うLRTも同じです。さらに、LRTの目的は利益ではなく公共交通事業ですので、黒字にする必要はありません。IRでの投資を利用すれば、千葉の新しい交通の足を生み出すきっかけにもなります。
 

LRTが中長期的な経済発展効果をもたらす

今の日本では人口減少による需要の縮小が問題となっています。今までは消費者の需要に合わせて事業を大きくしていたが、現在人口とともに需要も徐々に減っています。その結果、事業を縮小する企業が多くなっているのです。
 
IRは日本国内だけでなく外国人からの需要も得る大きなビジネスチャンスになります。IRでお客様を呼び込むには移動手段は必ず必要です。IRによるLRTは日本人だけでなく外国人のお客様の需要も呼び込みますので、需要が拡大し、雇用のきっかけや中長期的な経済発展効果も期待できます。
 
これはLRT事業者一社が儲かる、というわけではなく地域全体の活性化と発展に結びつくと言えます。千葉市のLRTを「人に優しい交通インフラ」のモデルケースとして紹介すれば、今までに人々が持っていた都市のイメージががらりと変わるきっかけになるかもしれません。

株式会社フォルム 代表取締役 松本氏の構想、メガフロート構想の活用について

メガフロートは桟橋に客船をつけて、海上交通として活用できればさらに交通インフラの利便性が高まります。幕張の海岸は内湾で波が高くないため、子供たちも遊べる海でもあります。砂を白い砂に入れ替えて子供が遊べる幕張海岸を作るなど、大人以外も楽しめる要素がIRには必要になります。

吉田氏のIRにかける覚悟の源とは

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私の父は雑貨屋からタクシー、バスの事業を手掛けました。つまり個人から公共事業へ移った経緯があります。自分が生きている間に作った交通インフラや公共事業は、自分が死んだあとも人々に使われるため、世の中に残りますよね。父のように、生きている間に公のために何かを残したいと思いました。IRでは「100年の計」として、LRTでの交通体系をしっかり作って残したいという強い思いがあります。
 

地元幕張として実行しなければいけないこと

オール千葉でできるか、です。
 
IRは培ってきた日本の良さを世界に対して発信して人が集まってくる中で、地元の子供たちも本物に触れられる、雇用問題が解決するなど経済発展のチャンスでもあります。その上では、千葉が一体となるのが重要。IRには建設、交通、障碍者雇用など多様な面で大きな成果が期待できます。千葉全体が一体となってチャレンジすれば、必ず自分の元に利益として返ってきます。
 
日本の人口が減少し需要が縮小しても世界との関係は切れません。IRを通してチャンスを活かし、収益を公のためのLRT交通インフラ整備を整えるコストにあてれば、地域全体の活性化にもつながるのです。
 
プロフィール
吉田 平(よしだ たいら)
昭和34年千葉県生まれ。
東北大学工学部卒業後リクルートに入社。
12年間のサラリーマン生活を経て、35歳の時に父が創業したバス・タクシー会社に入社、平成19年に同社代表取締役に就任。
その後、第三セクターいすみ鉄道社長公募に応募し、平成20年4月より平成21年2月まで、代表取締役に就任。
現在は西岬観光株式会社、あすか交通株式会社及び平和交通株式会社の3社をグループ会社とする「ビィー・トランセホールディングス株式会社」代表取締役。公共交通事業として、地域社会に根差した新しい取り組みへの実績も多数。

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