関西大学 政策創造学部 教授 白石 真澄 氏 | 幕張新都心 MICE・IRを考える会

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関西大学 政策創造学部 教授 白石 真澄 氏

30年後の活力ある千葉の姿を描くため
IRの可能性にかけてみよう

 


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現在「関西大学 政策創造学部」教授として多くの学生へ教鞭をふるう一方で、教育や福祉に関する政府委員を経験、そして千葉女性市民の会事務局長としても活躍する白石真澄先生。幅広い分野に対する知見と女性や母親としての視野を併せ持った白石先生が考える、IRへの思いやお話を伺った。

IRは日本の景気の起爆剤

東京オリンピックで日本は建設需要のピークを迎えます。2020年以降、日本の景気の起爆剤として期待されているのがIRです。現在3,000万人となっているインバウンドをさらに増やすには、日本は従来の都市観光だけでなく新しいエンターテイメントを提供しなければいけません。
IRはカジノだけでなく、ショッピングやホテル、エンターテイメントと複合的な要素を持っているため、外貨獲得、雇用面をはじめ高い経済波及効果が得られるでしょう。

IR導入の3つのポイント「多様なお客様向け」「治安面」「資金力」

ラスベガス、マカオ、オーストラリアのアデレードなどでIRを実際に体験しましたが、行く前と経験した後のIRのイメージは全く異なりました。行く前はIRには男性グループが多いのかなと考えていましたが、ラスベガスでは全体の6割ほどが女性客で、女性グループや家族連れが多い印象を受けました。
日本のIRにも、せめて観光客がラスベガス同様、3泊4日以上は滞在できる仕掛けづくりが必要です。カジノだけでなく、食事や美容・健康・癒しなど女性や家族連れまで多様なお客様に楽しんでもらえる工夫を取り入れるべきだと考えます。
幕張は土地活用ができる部分が多く、市街地にはない海があるため、多様な仕掛け作りの潜在力も高いでしょう。

次に必要なことは治安の強化です。例えばラスベガスでは行政と市民組織がパトロールを強化し、街の治安が相当良くなりましたし、韓国カジノは利用できるのは外国人のみです。IRにアレルギー反応が出ているのは反社会的組織の暗躍やギャンブル依存症の問題ですが、警察行政や医療ケアを含めて議論していく必要があるでしょう。

IRは巨大な装置産業ですので、宿泊施設や劇場などの設備投資のほかにアクセスのためのインフラ整備に相当の資金力が必要になります。ラスベガスでも実施されてきたようにホテルのリニューアルやショーの入れ替えはクオリティの陳腐化を防ぎ、客離れを起こさないためにも必須です。
特に首都圏空港や港からのアクセスは、外国人観光客のリピーターを獲得する上で重要です。

幕張だからできるIRの5つのメリット

Makukhari New Town from Kemigawahama,

1つめは、幕張には陸海空からの地の利があります。成田からリムジンバスで30~40分、羽田からも30分~最高でも1時間で到着可能です。湾岸道路や高速道路を使って習志野インターでも降りられますし、鉄道のアクセスも良いです。さらに大型客船の接岸も可能になるような港の改修も行わなくてはなりません。
またオリエンタルランドがある浦安を始め、館山・銚子など千葉の観光資源を活用すれば、より多くのインバウンドに滞在型観光の需要が見込めます。東京や京都、富士山など日本の代表的観光地をすでに訪れた外国人観光客は、面白く新しい体験を求めています。

2つめは、海があることです。もしIRを海上に造れば、市街地から離れていることで、騒音や交通量の影響を極力、抑えられます。よりIRの可能性が広げられるでしょう。

3つめは、幕張にはすでに多くのホテルがありますが、IRを踏まえると現状のホテルの客室数では足りず、富裕層向けの5つ星クラスのホテルも必要になります。新しいホテルの建設用地も幕張なら確保できます。

4つめは、幕張の居住者は比較的、平均年齢が若く、雇用の面でもアドバンテージがあります。IRは複合施設のため、カジノだけでなく宿泊、飲食、劇場など多くのジャンルで労働人口が必要です。幕張なら、地元から人材を積極的に供給できますし、鉄道のアクセスも良いので周辺地域から働き手を得ることもできます。

5つめは、幕張は既に完成度の高い街の景観を持っています。ここにIRというエンターテイメント施設ができることで、より幕張地域としての魅力がアップするでしょう。

IRによって継続的に効果を出すために

IRについては現在、賛否両論ありますが、メリット、デメリットを踏まえ、IRができた後の姿についての議論が必要です。今後、日本は50年すると8千万人台くらいに人口が減り、税収減の一方、社会保障費用は急増します。今私たちが受けている福祉や教育サービスのレベルを維持するには、新しい産業を興し、税収を増やさねばなりません。今後34万人という外国人労働力の活用も視野に入ってきます。

幕張がほかのIR候補地に勝つための方法

例えば大阪は、行政主導で調査予算もつき、IRへの機運が盛り上がっているため、大きなエネルギーを感じます。候補地へのトンネルなどのインフラもすでに整っていますし、大阪には有形・無形の文化遺産も多いですし、食の魅力もあります。多くのアジアの人が関空を使って来ており、既存の観光資源に加えてIRを組み合わせることで大きな魅力になるでしょう。

一方で幕張IR推進は、市民団体が中心で、文字通りの手弁当。行政のバックアップはありませんので、今後、大切な事はIRについて地元や周辺都市に正しい知識を持っていただくための情報公開ではないかと思います。周りと話してみてもIRについてのイメージはそれぞれで、IRといえば賭け事でカジノが中心、多くの人が「治安が悪くなる、ギャンブル依存が増える、街が荒れる」という悪いイメージを持っていますが、一方で「行ってみたい」と言う人もいます。
海外のIRでカジノが占める面積割合は実は2割ぐらいで、ほか8割がショーやショッピング、レストランなどです。IRとは宿泊施設、商業施設、飲食、シアターなどを含めた複合施設のため「全てギャンブル」というわけではないことを理解していただくことが重要だと思っています。

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外国人観光客が日本を訪れたとき、かつての東京→大阪→京都のルートではなく、今はどんどん、小豆島や離島を含む地方に人が流れています。これはインスタグラムやツイッターなど個人のSNSから情報・ヒントを得て、個人旅行を楽しむ外国人が増えているからです。たとえば長野県の地獄谷温泉につかる野猿を見に行く外国人はSNSに触発されて30分も山道を歩いてくるのです。

これからは一度団体で来た外国人観光客が、リピーターとして個人で日本に来ることが増えていくのでしょう。これらを踏まえて、幕張の観光面での魅力を上手に外国人観光客に伝えるのも重要でしょう。

今の若者と、将来のために夢を持つ

千葉市も収支は改善しましたが、今後、人口は減少していきます。税収が減る一方で高齢者は増加しています。社会保障費用も上昇するし、将来は老朽化したインフラ整備などのメンテナンス・コストもかかるでしょう。千葉市としての税収を増やさなければ、高度成長期のような工場や企業誘致は限界があります。「将来、子や孫が食べていける飯のタネ」をどうするか、もちろん起業促進という手もありますが、起業当初から大きな雇用を生むわけではありませんし、税収効果が出るには5年から10年かかります。飯のタネとして今後、税収や雇用効果をあげるにはIRは大きな可能性があります。

私は大学で多くの学生とも接していますが、今のほとんどの若者が「そこそこの生活でいい」言い、多くを望んでいません。私たちは日本の高度経済成長期やバブルを経験し、努力すれば収入も増やすことが出来た時代です。しかし、一度も景気の良い時代を過ごしていない彼らは、上昇志向も希薄です。

日本の新しい景気の起爆剤として期待できるIRは、産業としてだけでなく、都市や日本の姿を変える可能性を含んでいます。IRはオリンピックと同様、夢や目標を持てない現在の若者に元気な都市の姿を見せることもできるでしょう。千葉は、ぜひIRの可能性にチャレンジしてほしいですね。

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プロフィール
白石真澄(しらいし ますみ)
大阪府出身。関西大学大学院修士課程工学研究科建築計画学専攻修了。 (株)西武百貨店、(株)ニッセイ基礎研究所の主任研究員を経て、東洋大学経済学部社会経済システム学科教授、関西大学政策創造学部教授としてのキャリアも持つ。国や地方自治体の教育、少子化、福祉に関する各機関で政府委員としての活動経験のほか、女性、母親としての視点も活かして「千葉女性市民の会事務局長」としても活動中。

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