大阪商業大学 総合経営学部 教授 美原 融 氏 | 幕張新都心 MICE・IRを考える会

幕張新都心MICE・IRを考える会

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大阪商業大学 総合経営学部 教授 美原 融 氏

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IR誘致において専門家である美原氏に、他県と比べた千葉の現状や、日本におけるMICE・IRの必要性について伺った。

 

他県に比べて、今現在の千葉県の動きは?

 

現状では、政治的な合意形成が弱いように思います。

 

本来、幕張のような、ポテンシャルがある地域をどう産業的に構成し、どのように観光政策上位置づけるかという、グローバルなビジョンがなければいけません。
それを広域的な自治体と基礎的自治体が共有しながら、また、地域住民と合意形成しながら共同して実現していくというアプローチが必要になります。こんなに大きな県でありながら、実は県も市もバラバラという現実は、ちょっと不思議ですね。

 

今の時代は自治体間、地域間で競争が起こっています。この地域をどうしたいのかというイメージを、行政組織や、知事、市長が共有しながら地域社会を考えていく。こういう仕組みがないのは、弱いです。
しかし、逆に強みというのもあります。
「幕張新都心MICE・IRを考える会」のように、地域の人たちが自然的に率先しながら行政を動かしていくというのは、実は本来あるべき形としては強いわけです。
なぜなら、行政や議会を支えているのは市民でもあり、合意形成の主体は市民ですから。

 

地域ごとに誘致活動のやり方は色々あります。
例えば、大阪のように市長がやる気で出てくる地域もあれば、合意形成がいらない東京のような場所もあります。地道に民間が盛り上げながら行政にリードを取らせ、役割分担をうまく決めながらやっていくモデルというのは、まだ千葉県では足りないのではないかなと思いますね。
本当は強い、民間からの力を行政がすくいあげて、いかに県全体としての力にもっていくかというのは、今後の課題でしょう。
今の千葉県の動きは、弱点もあれば、良い所もあるということです。

 

 

ポテンシャルを持っている幕張のレベルを高めることがポイント

 

幕張という街は、実際にMICE機能を持っているので、ポテンシャルはあります。でも、中途半端なことは間違いない。ホテルが少ない、あるいは会議施設の在り方、街の在り方、ホテルの在り方がバラバラになってしまっています。機能が統合されていないんですね。MICE施設をもっと拡大し、ホテルももっと大きくしながら、人が集まるような街にする。例えば、劇場やコンサートなど、エンターテインメントに人が集まるようにすれば、若い人がくるかもしれない。幕張でコンサートをやったら何万人も人が来るでしょう。

 

人を来させるようなメカニズムを造り、集客させる。人が集まることによってお金が地域に落ちます。カジノというのもその一つの仕掛けです。
コンベンションというのはビジネスオリンテッドですから。博覧会や展示会もいいですが、必ずしもビジネス重視ではないような仕掛けがあってもいいんです。
どうやってもっと、付加価値の高いサービスが提供できるようなMICE施設にもっていくのかというのが、今の幕張に関するポイントですね。

 

 

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カジノ誘致に選ばれやすい場所とは?

 

私の目的は、政府をあるいは立法府を助けて制度的な枠組みを造り、公平公正な手続きを経て地域が選ばれる仕組みを造ることです。そういった意味においては、どこが選ばれようともしっかりとした仕組みのもとで選ばれる限りは問題ないと思います。
しかし、どの地域がよりチャンスが大きいだろうかというのはあるかもしれません。
それはやはり、合意形成とビジョンを持っているところ。地域社会はどうあるべきかという考えを、知事や市長、行政組織と市民が共有しているところが強いのは間違いありません。
そこがしっかりしているなというのは、話をしていて分かりますよ。
バラバラだというのも、話をしていて分かります。

 

 

オペレーター(投資家)は誰が選ぶの?

 

選ぶのは国ではなく、基礎的自治体です。幕張になった場合、千葉市が選ぶことになります。ですから、市が考えなければならないのは、幕張という街のビジョンです。そのビジョンを市民と共有するのが市長の役目であり、オペレーターに対して「幕張のために何をしてくれますか」、というのが市長の言うべき問いかけになります。
どのくらい投資するのか、雇用はどうするのか、地域社会にどんな影響をもたらすのか、あるいはどのような問題が起こって、そのときどう対処するのか。
それを問いただすことができるのは市です。ですから、ビジョンがしっかりしていないとできないのです。

 

 

ビジョンを実現するのは民間提案

 

ただ、そのビジョンがあったとして、それを実現するノウハウを市は持っていません。
建築デザインなどは民間にやってもらった方がいい。実現のための計画案を民間が策定し、検証して、市に提案する民間提案が重要になってくるでしょう。
市の役割は仕様を決めることです。機能だけを定義して、この街に無いもの、欲しいものを明確にすることですね。
国は法という大きな枠組みを決めて、自治体がビジョンを決める。そして実行するのは民間ということです。

 

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懸念材料としての地域経済への影響

 

大規模集客施設というのは、地域社会に様々な影響を与えます。そのあり方を最初から議論していくことが必要です。
よく欧米などで見られるのは、地元の企業からの財とサービスの購入義務です。飲み物や食べ物などは地元から買ってもらい、雇用も地元中心にしてもらうというように、誘致契約で縛っています。あるいは、既存のホテルと投資家が建てたホテルとを連携しながらお客を融通しあうなど。
地域社会の人たちや地元の経済界が、納得するような枠組みを提供しない限りなかなか賛同は得られません。自分たちの事業を取られると思ってしまいます。
ただ、人が集まれば、色んなところでお金は落ちるのは間違いないわけですから、協定を結んで、みんなでお客を呼びましょうというのが理想的でしょう。

 

 

日本のIRの失敗、成功の定義

 

民間のリスクで、民間がやろうとするので、当然彼らはマーケットと地域社会を見ながら、自分たちがどのくらい投資をして回収できるかというベースを造ります。そういう規律が働くことが大きなポイントです。
例えば、失敗して事業者が倒産しても僕は問題ないと思っています。建物はなくならないし、逆に「安く買える!」という日本人がでてきて、買い取ってしまうかもしれない。資産は逃げないわけです。枠組みを変えずに経営者だけを据えかえれば雇用も逃げません。失敗しても修復するメカニズムが働くはずなんです。
このようなことを、日本はやったことがありません。常に行政が入って手厚く保護し、失敗するというケースが多いように感じます。
利用者も喜び、事業者も事業性があり、地域社会に確実にお金が残るようなシステムが本来のIRの形なんですね。

 

IRのコンセプトというのは90年代以降に出来ました。集合化するメリットというのは、あまり競争的に乱立していないからです。例外を除いて、一つの市に一つくらいでしょう。
うまく育てようと思えば、やっぱり地域限定的にとらえるのが、失敗が少ない例といえます。IRがうまくいくかどうかは、日本人の知恵や地域社会の知恵が試されます。

 

 

なぜいま日本にIRが必要なのか?

 

政治家の先生方は、成長戦略の一環とお考えです。
例えば、ひとつの施設で5,000億円、6,000億円規模の民間投資を誘致できれば、その投資家が誰であれ、膨大な経済効果がもたらされるのは間違いありません。そういった意味では、海外からの投資も含めて地域社会を活性化するメカニズムを制度でつくることによって実現することができます。
あまり税金を使わずに地域社会を活性化することができて、税収増や雇用増をもたらすことができる。お金が動いて人が動くというのは経済にとって一番重要です。
そういうことを作り出す仕掛けを法律で作ろうとしています。

 

IR誘致を契機にみんなで地域社会の在り方や将来を考え、自分の住む街をどうしたいかを、行政と市民が一緒に考えることが一番必要なことなのです。

 

プロフィール 美原 融氏

 

一橋大学経済学部卒。三井物産,三井物産戦略研究所を経て、大阪商業大学総合経営学部教授、東洋大学大学院客員教授,株式会社美原融事務所代表取締役。専門は公民連携制度手法論。過去に政府省庁・自治体における様々な公民連携制度に関する委員会,研究会委員等を歴任。
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